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アレンジ(編曲)で副業?






こんにちは!首藤健太郎です。
近年は副業する人が増えているとか。緊急事態宣言や自粛要請などがあったので、自宅でできることの候補として考えていた人もきっと多いはず・・・。
ということで、

 ・アレンジを副業にしようかなあと考えている方
 ・合唱音楽に関わる方、特にアマチュア〜ハイアマチュアの方
 ・シンプルに「どんな手順でアレンジをしているの?」という疑問を抱く方

に向けて、近頃の仕事から具体例を2つ出して合唱のアレンジについてお話ししていこうと思います。
今までどんな手順で編曲をしているかということをまとめてこなかったので、自分自身にとって整理整頓できて勉強になりました。また、あくまで私なりのアレンジの【工程】の中からのひとつということで記事をご覧ください。





アレンジ(編曲)とは?









色々な分類があるとは思いますが、目的によっていくつかに分類してみました。

A既に完成された楽曲の楽器編成を変える
 例)ヴァイオリンの曲をフルート用に、歌モノをオケ曲になど

B既に完成された楽曲のジャンル(スタイル)を変える、混合する
 例)フォークソングをEDMに、クラシックのピアノ曲を和風ロックになど

Cメロディとコードなど、限られた素材のみの音楽を完成させる
 例)メロディと歌詞だけできた自作曲をバンド編成に完成させるなど

D曲の断片や途中までできているものを完成品に仕上げる
 例)未完成だったモーツァルトのレクイエムを弟子のジュスマイヤーが完成させる(「補筆」)など

E既に完成された楽曲の内容に何か足したり省略したりする
 例)わらべ歌に前奏や間奏をつけるなど

などの目的によって大別できます。
特に、C・Dについては作曲の一部分とも考えられます。
今回は、
2020年8月23日(日)に北牧楽集館(長野県南佐久郡小海町)で演奏された
東混カルテットフレッシュコンサート ~晩夏のハーモニー~
というコンサートの演奏用に編曲された「あずさ2号」と、

2020年09月05日(土)に名取市文化会館(宮城県名取市)で演奏された
東混ゾリステン ~東京混声合唱団メンバー8名による
というコンサートの演奏用に編曲された「長崎の鐘」の2つを例にしたいと思います。
この2曲はすでに完成されている曲ですので、A・Bのどちらか、あるいは両方になると想像できますよね。
実際の編曲ではEも行いました。





工程一覧









見直してみると、全10工程でした。

① 仕事の契約をする
② 楽曲について調査する
③ 必須情報を入力する
④ 編曲プランを大まかに考える
⑤ 音符(や歌詞)を入力する
⑥ クライアントに現状報告と確認をする
⑦ ⑤と⑥を繰り返す
⑧ 前書きを書く(書き加える)
⑨ 全体を見直し納品する
⑩ 訂正する

です。
一つ一つ解説していきますね!





①仕事の契約をする





アレンジの工程についてのお話ですが、その前に仕事なので契約のお話をしなければなりません。結構この段階が重要だったりします。特に「要望」についてはそうです。
 という事で、

・クライアントからの依頼
があって、

・条件や曲目や要望や締め切りなどの確認(工程⑥の説明で、なぜ重要かがわかると思います。)
をして、

・引き受ける(あるいは引き受けない)
かを決めます。(今回の2件はもちろん引き受けました笑)

東混さんの場合はマネージャーさんからメールと電話でのやりとりで正式に決定することが多いです。ちなみに両曲ともPDFデータでの納品でした。楽譜の現物を納品するより、データでの納品が多いのではないでしょうか。





②楽曲について調査する





正直なところ、ここが一番大変だなと感じる事が多いです。
今はありがたいことに、書籍はもちろんWeb検索・Youtubeなどで情報や音源を確認できるので助かります。今回はそれらと、参考のメロ譜(「あずさ2号」についてはなかったのでメロ譜の購入を、「長崎の鐘」については歌曲編成の楽譜を所持していました)も参考にして作って行くことになります。元々の楽譜が存在しない・手に入らない場合は、耳コピ(音を聞いて楽譜に起こす)をしていくことになります。





③必須情報を入力する





この部分については、項目がいくつかあるので一つずつ説明していきます。

クライアントに納品する商品には、五線に書かれた楽譜の部分の他に、

 ・表紙
 ・編成と演奏時間
 ・前書き
 ・メインメロディや歌詞

 が考えられます。

「表紙」には、曲タイトルや作詞・作曲・編曲者などの名前、出来上がる(上がった)日付を書きます。

「編成と演奏時間」については表紙の裏面、実質的な1ページ目に書いています。楽譜を見開いたときの最初のページで、左側です。内容の説明は不要ですね、そのままです。

「前書き」は実質的な2ページ目になります。楽譜を見開いたときの最初のページで、右側です。この部分は、楽譜を作っていく中でよく変わることがあるので後から書くことが多いです。詳しくは工程⑧で解説します。

「メインメロディや歌詞」についてですが、編曲する曲のメインメロディはもちろん必須で、歌モノは歌詞が必須ですね。
入力は、FinaleやSibeliusなどのPCで作成できるためのソフトがありますので、それを使い入力していきます。私は、PCはMac でFinaleを使っています。ここでの歌詞入力というのは、楽譜上に書かれるもので、音符のすぐ下に書く歌詞のことです。
いわゆる歌詞カードは、前書きのすぐ後ではなく、楽譜(五線部分)の後のページに掲載することにしています。
ちなみに、ここでの工程「③必須情報を入力する」と、次の工程「④編曲プランを大まかに考える」ということを並行して進める(考えてしまっている)ことが多いです。





④編曲プランを大まかに考える





ここの工程では、調査した内容を踏まえ、クライアントからの要望も実現できるよう、曲をどのようにアレンジするかを考えていきます。
特にアレンジの方向性や内容をどうするかということに大きな影響を与えるのが、クライアントからの条件や要望です。

「あずさ2号」は、もともとの編成はオケ・リズム隊・音域が同じ男声2人(狩人のお2人)のようで(収録したレコードなどにより、この他にもバージョンが色々ありますね)、今回は東京混声合唱団の中でも東混カルテットの4名(ソプラノ・アルト・テナー・バスの声種が違う4名)とピアノのために編曲ということでした(=既に完成された楽曲の楽器編成を変える編曲です)。これは演奏会でのメンバー編成の条件ですので絶対はずせません。
音楽内容としては、「ビート感を大事に」ということでした。冒頭からの哀愁漂う雰囲気はもちろん、特にサビでのリズム隊の中でもベースの音が重要となると考えました。あとは、「男声を中心に」ということでした。
今回は鍵盤を触りながら、歌いながら以下のメモを取りながら進めました。

イントロあり。合唱も活躍(女声かアルトのみ?)。
Aメロ、A’メロ、サビの各メインメロは男声。
1番と2番の変化は、ピアノとハモリ具合でつける。
間奏はピアノ活躍で展開部的に。ピアノパートはショパンっぽいのが合いそう

という感じです。
お話をいただいたのが7/27でその時に契約し、締め切りは、8/1でしたので5日間で仕上げる必要がありました。感覚としては、10時間あれば大丈夫と思っていましたので、ペースとしては1日2時間平均で進めて行けば問題ないと判断しました。
 





「長崎の鐘」は元々の編成はオケ・独唱(藤山一郎さん)・女声合唱のようで(こちらも収録したレコードにより、この他にもバージョンが色々ありますね)、今回は東京混声合唱団の中でも東混ゾリステンの8名(混声4部合唱で各パート2人ずつ)とピアノのために編曲ということでした(=こちらも既に完成された楽曲の楽器編成を変える編曲です)。
要望の一つに「尺は1〜4番の歌詞全部」ということでした。何番も歌詞があるものは、演奏時間や演出その他の都合により省略して演奏することもあるので、それも踏まえて融通の効くアレンジにしておくのもポイントです。また、合唱パートは4パートなので、同時にならせる音は4音ですが、各パート2人いるので最大8名となり同時に8音鳴らすことも可能です。重厚・多彩なハーモニーなどをつくる場合はdiv.してそのようにすることもありますが、今後カルテット(4名)でも演奏するかもしれないという可能性も含めて、最大4音で作ることにしました。
この作品の作られた背景から導かれた方向性をもとに、1〜4番までの同じような伴奏ではなく、歌詞に沿った伴奏をつけることにしました。
この曲も鍵盤を触りながら、歌いながら、メモとしては、

各サビはそれほど変化させずに。
イントロに鐘の音をピアノで。
1番は淡々と。
2番は鐘の音をバックに。
間奏は少々展開部的なものを
3番は淡々とした中に情景描写を
4番はコラール風に(ここは絶対やりたい)
後奏は希望の鐘の音を。

という感じです。
この曲は、サビが始まるまではマイナー(短調)で、サビはメジャー(同じ主音の長調)という構造です。このように転調することは一つの特徴です。それを活かした構成にしたいと思いました。
また、ハーモニーが変わるタイミングがあまり多くない曲です。それが特徴の一つではあるのですが、比較的ゆっくりなテンポということと、オケのような音色変化ができないことを踏まえ、ハーモニーに変化を与えるべく、サビまでの部分のハーモニーを1〜4節で変化させようと思いました。サビはリハーモニゼーションしてはいますが、1番と2番では全く異なるというようにはせずに、節毎に大幅な変化は与えないことにしました。
こちらは、お話をいただいたのが8/22で、26が締め切りでしたので、4日間のうちに仕上げなくてはということで、なるべく早く作業を開始しなくてはと思っていました。こちらの休日が日曜と月曜でモロに締め切りの前を跨いでいたため作業日としてはほとんど2日間しかなく、作業時間の割り振りが非常に大事になります。こちらも仕上げまで10時間くらいかなあという感じのイメージでした。
この工程「④編曲プランを大まかに考える」や「③必須情報の入力」 の時には、こういった文字としてのメモも取ります。また、コンピュータ上のスコアの下に余分な五線を用意しメモ欄を作り、使いたいコード・コード可能性の列挙・伴奏音型やサブメロディ候補などもメモしていきます。
どのアイデアを捨ててどれを実現させるか(お客さんがわかるように演出するか)を考え、伝わるように構成するかが大事なポイントの一つです。内容がシンプル過ぎても、詰め込まれ過ぎてもよくないという、加減が難しいところのひとつではないでしょうか。





⑤ 音符(や歌詞)を入力する





さて、いよいよメインメロディ以外の音符や歌詞などを入力する段階です。電子キーボードをつないだPCで演奏しながら、歌いながら実際に音符を決定し入力していきます。「③必須情報を入力する」「④ 編曲プランを大まかに考える」の工程で書いた言葉のメモと音符も参考に実際に書いて(入力して)いきます。
この時、より良いアイデアが出てきたらどんどん変更します。多くの場合、アイデアそのものを捨てることは余りなく、膨らませる方向で補正していきます。ものによっては、ある部分についてはアイデアが決まらずどうしよう・・・という状態で始めることもあります。しばらく考えていても良いものが思い浮かばないときは実際に書くことにしています。未決定の部分は試し弾きや歌いをしたりしているうちに決まっていきます。「案ずるより産むが易し」ですね。





⑥ クライアントに現状報告と確認をする





「⑤ 音符(や歌詞)を入力する」の工程をする中で、ある程度まとまったセクションができた時や、確認したいことが出てきた場合に、都度クライアントに音源と譜面データを送って内容を確認します。
私は、この工程は最も重要と思っています。出来上がったものについてクライアントの認識(予測)と実際作ったものが、「違う印象・もの」とクライアントが感じてしまうことを回避するために、全てが出来上がる前に、何度も互いに確認するようにしています。途中の段階でお互いの予測が一致しなくなってきた場合は、方向を修正していきます。もちろん、完成した後で「やっぱりこうしてほしい」と言われることもあります。その場合は作り直します。
ちなみに、変更後に、「やっぱり変更前の方で!」となる可能性もあるので、その時のために、ファイル名を分けて保存するのも大事かと思います。
何れにしても仕事ですので、お客さんの満足あってのものですよね!





⑦ ⑤と⑥を繰り返す





「⑤ 音符(や歌詞)を入力する」と「⑥クライアントに現状報告と確認をする」の工程を繰り返し、最終稿ができてクライアントからOKが出たら楽譜自体はひとまず出来上がりです。
 往復回数はケースバイケースです。数回から10数回、大きなものによってはそれ以上になることもあります。

「あずさ2号」の場合、歌のバスパートの音域についての確認や、言葉だけでなく実際の譜面と音源データでのイメージなどの確認を中心に行いました。確か全部で4往復ほどだったと思います。今回は、ほぼ出来上がり全体を確認してもらった際に、「女声でもメインメロを歌いたい」という要望が出てきたので、2番歌詞でサビ前までは男声でなく、女声に任せることに変更しました。

「長崎の鐘」の場合、音楽的な要望は特にはなかったので、ほぼ完成させてからの確認作業でした。そのあと改定をしながら見直しをし、2回ほどやり取りをしたと思います。締め切りまでの期間も長くはなかったので都度の連絡が帰ってくるまで作業をせずに待つというのはなかなか難しいところもあります。





⑧ 前書きを書く(書き加える)





前書きについては、内容としては、「③必須情報を入力する」のなかの一つです。
必須情報のうちこの前書きについては、楽譜ができてからまとめあげていくことが多いです。というのも、実際書き出してみて、当初のプランやアイデアを変更しながら書き進めることもあるので、最初に書いても完成できないのです。もちろん、「今回はこれで絶対決定!」みたいな場合は、プランを練りながらアイデアメモと兼用しながら書き進める、ということもあります。
楽曲の基本情報ももちろん大事ですが、自分が特に大事だなあと思うこととして、

 ・編曲者である自分がなぜこのような編曲をしたか
 ・楽譜に書ききれなかったことの補足をする

の2点が挙げられます。





⑨ 全体を見直し納品する





全体を見直し、納品します。レイアウト・誤字脱字・強弱やアーティキュレーションなどなど、もう一度チェックします。





⑩訂正する





今回は遠方ということもあり、現場に行けなかったので練習音源をいただき、もし実際の音のイメージとかけ離れていたり、クライアントから訂正の要望が出たりした場合は訂正します。
流石に、実際の音のイメージとかけ離れていることはないですが、

「あずさ2号」では、最後のユニゾンの音を女声パートのみ、1オクターブ上げたいという報告がありました(練習現場での判断)。楽譜訂正までには至らず。

「長崎の鐘」では、演奏時間の関係?から、公演では3番をカットということになりました。こちらは、今回の処置としては間奏部分でうまく4番に続くことができたので特に楽譜を書き換えたりせずにすみました。

もちろん何も問題ない場合はこの工程は必要ありません。
こちらのミスで訂正する場合もあります(ホントごめんなさい、・・・土下座)。





 





まとめ





長くなりましたが、最後にまとめますと、

① 仕事の契約をする
② 楽曲について調査する
③ 必須情報を入力する
④ 編曲プランを大まかに考える
⑤ 音符(や歌詞)を入力する
⑥ クライアントに現状報告と確認をする
⑦ ⑤と⑥を繰り返す
⑧ 前書きを書く(書き加える)
⑨ 全体を見直し納品する
⑩ 訂正する

の全10工程でした!
 
ちなみに、最後に実際にかかった時間をお伝えしましょう。
最近はよっぽどの急ぎの場合は除き、何をどのくらい作業したかを15分刻みで記録しています。なぜ15分かというと、15分×3回=45分 + 15分の休憩 という1時間を一つのクールにして作業しているからなんです。45分というと、小学生の時の授業時間ですよね!?(僕の小学生時代はそうでした)。やってみてわかりましたが休憩することがいかに大事かを実感じています。ついついタイマーをかけ忘れてしまうこともありますが・・・。この仕事のクールについては別記事で!

 さて、「あずさ2号」の場合、
7/27① 数分
7/28、29、30②③④ 2時間
7/30、31 ⑤⑥⑦ 3.75 時間
7/31、8/1 ⑧⑨ 3時間
 合計8.75時間少々

「長崎の鐘」の場合、
8/22① 数分
8/23②③④ 1.5時間 (日曜だがかろうじてこの日作業できました!)
8/25⑤⑥⑦ 6.5時間
8/26⑧⑨2.5時
⑩は練習現場判断 数分(練習はいつだったかな・・・)
合計10.5時間少々

以上、 

 ・アレンジを副業にしようかなあと考えている方
 ・合唱音楽に関わる方、特にアマチュア〜ハイアマチュアの方
 ・シンプルに「どんな手順でアレンジをしているの?」という疑問を抱く方

に参考になれば幸いです!


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