このシリーズ、第1回はオーケストレーションとレッスン概要を、第2回では弦楽四重奏版アレンジについてお話ししました。今回は弦楽アンサンブル(合奏)版です(注意:作例は絶対的な解答ではなく、編曲する人や、考え方や、翻案の仕方によりさまざまであることを、ここに記しておきます。ご了承くださいませ)。
まずは原曲(ピアノ版)です。
さて、弦楽アンサンブルは、1stVn.、2ndVn.、Va.、Vc.、Cb.の各パートを複数で演奏する形態です。通常左からこの順で並び演奏します。なお、弦楽四重奏と同じく、Vn.は1stも2ndも同じヴァイオリンですが、パートが2つであり、役割が違います。各パートの人数は基本的には偶数です。呼び方としては、1stVn.の人数に「型」という言葉を足して、「12型」や「10型」などと呼んだりします。2ndVn.以下は概ね2人ずつ減らしていきますので、
「12型」ですと、1stが12人、2ndが10人、Va.が8人、Vc.が6人、Cbが4 人。「10型」ですと、1stが10人、2ndが8人、Va.が6人、Vc.が4人、Cbが2 人(割合的に低弦が少なくなるので、多少前後します)。編成表や文字で伝えるときには、「12/10/8/6/4」や「10/8/6/4/2」のように書き表したりもします。1stが8や6や4などの場合は、変則的なことも多く「絶対にこの人数」というようにはなかなか定められません(8/6/4/3/2や6/4/3/2/1や4/3/3/2/1など)。なお、弦楽器の奏者は、2人でペアになって譜面台(「プルト」といいます)を1つ使用し、楽譜を見ながら演奏します。その際、客席側を表、その逆を裏などと呼び、裏の奏者が譜めくりを担当します。
さて、今回は小編成(1stが4人)・中編成(1stが8人)・大編成(1stが12人)と、3種のバージョンの音源を用意しました。
必ずしも上の編成に当てはまっているわけではないですが、小編成は人数が少ないため個々のパートの表現に生々しさをより多く感じ、編成が大きくなるにつれて厚みや広がりを持った響きになります。 この「厚み」や「広がり」は、複数人の声(微妙に異なるピッチや音色)を合わせて演奏する合唱(コーラス)で起こる現象から由来して、「コーラス効果」なんて呼ばれたりします。
次に弦楽アンサンブル(合奏)版にした音源と楽譜を掲載します(視聴は、良いスピーカーや、ヘッドフォンやイヤフォンをお勧めします)。
まずは小編成(1stが4人)版。
第2回の弦楽四重奏版と比べると、だいぶ厚みが違うように感じます。
続いて中編成(1stが8人)版。
また少し厚みがまし、広がりが出ます。
最後に大編成(1stが12人)版。
いかがでしょうか?大編成は、オーケストラ感があり、最後のフォルテの部分が、さすが、痺れますね!
弦楽四重奏と同じく、基本的には、上から音域順に原曲の音をそのまま当てはめていますが、いくつかピアノ版と異なる点もあります。
1・・・冒頭のイントロにおける伴奏音形の考え方とアーティキュレーションの追加について
2・・・2ndVn.の12小節目・1stVn.の13・16小節目のダブルストップについて
3・・・アクセント記号追加について
4・・・13〜14小節のメインメロディについて
5・・・ボウイングについて
6・・・コントラバスの扱いについて
順番に見ていきましょう。
まず、1〜5については、第2回でお話しした内容と同じなのでそちらをご覧ください。
ということで、 6・・・コントラバスの扱いについて です。
Cb.は、古典的な様式ですと、Vc.の楽譜と同じものを見て演奏します(実際は、Vc.の1oct.下の音が出ます)。そのため、チェロだけの時よりも、どっしりとした厚みや土台が形成された感じがします。DTMやプラグインでもお馴染みな、Sub Bass的な扱いというとわかりいいかもしれません。古典的といえど、もちろん現在もそのように扱うことは多々あります。今回は最後の部分の15〜18小節は大きな音量(フォルテ)ですので、この扱いにしました。初心者あるあるとしてよく陥りがちなのは、Cb.をずっと古典的な方法でVc.と同じ楽譜で演奏させ続けてしまうことです。実際の曲ですと、適度にVc.以下低音部分が適度に休符のことも多いですし、低音をずっと鳴らし続けると、聴いている方は疲労してしまうこともあり、避けた方が良い場合が多いです。
一方、前奏から練習番号B直前までは、実音でVc.と同じ高さの音をpizz.で演奏しています。これは、弾んだ感じを出す目的で、少しアタックを際立たせるためです。意図として、あまり分厚い土台にはしたくなかったので、今回はそのようにしました。この部分は最初、コントラバスは無しでもいいですし、もちろん、上述のようにVc.と同じ楽譜でarcoにするのもありです。
同じく、練習番号Bに入り、12・14小節のみにアクセントの部分がありこれを強調するため、ここの部分もpizz.でVc.と同じ実音を演奏しています。この部分を古典的な様式でVc.の1oct.下の実音をarcoでも良いでしょう。
試しに、古典的な様式だとどうなるか、Vc.と全く同じ楽譜を見て演奏した場合はどうなるでしょうか。聴いてみましょう。
全体的にずっしりとした、安定した感じ、伝統的で格式高い感じになりますね。これもいいなあ。
楽譜は以下のように、Vc.とCb.をまとめて一段に書きます。この時、Cb.はVc.と同じ楽譜ですが、実際にはVc.の1oct.下の音が出ることに注意してください。
いかがでしたでしょうか?今回は弦楽アンサンブル(合奏)のためのアレンジでした。
次回は、金管五重奏のためのものを記事にしたいと思います。
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それでは!