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ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」より 第3楽章 について 【分析】


こんにちは、本日は、ベートーヴェン作曲「ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」より 第3楽章」について取り上げます。

用語や形式の説明、楽譜をもとにした和声分析や動機分析などをご覧いただければと思います。

1798~1799年8月10日に作曲された、初期を代表する、いわゆる傑作と呼ばれる作品です。題名の副題は、Grande Sonate pathétique です。日本語で、「大ソナタ悲愴」です。
(Grande(大)、Sonate(ソナタ)、pathétique(悲愴)です。)
pathétiqueは、ギリシャ・ラテン語のパトス(激しく心が動く)が由来の言葉です。
フランス革命(1789年)後、それまでの音楽では心が動かないと考え、よりダイナミクス・旋律の動きなどを激しく変えることとなったようです。

今回の曲は、
第1楽章 Grave 4/4拍子 - Allegro di molto e con brio 2/2拍子 ハ短調 ソナタ形式
第2楽章 Adagio cantabile 2/4拍子 変イ長調 複合3部形式
第3楽章 Rondo, Allegro 2/2拍子 ハ短調 ロンド・ソナタ形式
です。

第3楽章の「ロンド・ソナタ形式」とは、なんでしょうか?
「ロンド形式」と「ソナタ形式」を合わせたものです。まずはそれぞれの用語について説明します。

まずは、「ソナタ形式」について簡単に説明いたします。
「ソナタ形式」とは、器楽の組曲「ソナタ」の第1楽章に多い形式の一つです。
「ソナタ」は、「鳴り響く」を意味するラテン語の動詞「ソナーレ(sonare)」が語源です。
カンタータ(cantata)という器楽伴奏付き声楽作品に対して、使われる言葉でした。元々は、単に器楽曲を意味しました。
3楽章形式だと1楽章ソナタ形式・2楽章緩徐楽章・3楽章ロンド、4楽章形式だと1楽章ソナタ形式・2楽章緩徐楽章・3楽章メヌエットやスケルツォ・4楽章ロンドが通常の配置です。

さて、ソナタ形式はどのような構造でしょうか?
提示部「第1主題(主調)」・「第2主題(属調)」
展開部
再現部「第1主題(主調)」・「第2主題(主調)」
という複合3部形式です。
長調ですと、主調をハ長調で説明すると、提示部第1主題主調ハ長調・第2主題属調ト長調。再現部は第1主題主調ハ長調・第2主題主調ハ長調となります。
短調だとイ短調で説明すると、提示部第1主題主調イ短調・第2主題平行調ハ長調。再現部は第1主題主調イ短調・第2主題主調イ短調や主調の同主調でイ長調となります。
昔は調性関係が大事で、時代が後になるにつれて主題(メロディ)の対比が大事になってきました。
また、古典的なものには、提示部の最後にリピート記号があります。また、再現部の最後にもリピート記号があるものもあり展開部と再現部を繰り返します。これはソナタ形式が提示部と再現部の複合2部形式だった時の名残です。









次に、「ロンド形式」です。
ロンド主題(A)を、それ以外の部分で挟んでいく、サンドイッチ(パン・ハム・パン・レタス・パン・チーズ・パン)のような形式です。
古くはA・B・A・C・A・D・A・・・ という感じ。
「小ロンド形式」と呼ばれるものは、「A・B・A・C・A」
「大ロンド形式」と呼ばれるものは、「A・B・A・C・A・B・A」









「ロンド・ソナタ形式」=「大ロンド形式+ソナタ形式(の調性)」という図式になります。









それぞれの区分の中で、さらに細かく1つ目の主題、2つ目の主題など、細かく分けることができる場合が多くあります。

それでは、実際の楽譜とその分析を見てみましょう。
四角で囲われた「提示部」 「〇〇主題」などと書かれているのはソナタ形式からみた用語、「A1」・ 「B1」・・・などはロンド形式から見た用語です。





























特筆すべきことは、
ロンド主題の冒頭4つの音と付点リズムについて、第1楽章の提示部の第2主題から音形から由来していて、









5小節目アウフタクトから6小節目の音形は、第2楽章の5小節目アウフタクト〜6小節目から由来しています。









また、上りつめて下がる音形、シンコペーション、激しい強弱変化などと考えると、3楽章はいわば1楽章や2楽章のDNAを受け継いで生まれた子供のようです。
このような楽章と楽章の連携は当時はほとんどなかったことでしょう。これ以降の作曲家たちは、この曲で用いられた楽章間コネクションような連携を使用したり、ラヴェルやフランクなどが用いた「循環形式」へと応用・発展していきました。
また、最低音の「F1」〜最高音が「F6」というように、当時のピアノの音域をフルに使っています。特に上りつめていった先の最高音はロンド主題部分の頂点で何度も登場します。もっと音域が広いピアノのための作曲を、もしベートーヴェンがしたのなら、この曲の形は変わっていたのではないでしょうか?音域を超える情動が楽譜から想像されます。
そのほか、動機や和声法など、興味深い点は枚挙に暇がありません。全てを詳しく述べると、大変な文字数と図になってしまうので、詳しくは画像をご覧いただけたらと思います。

以上、お役に立てればと思います。


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